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第83回定期演奏会

2023年7月16日

愛知県芸術劇場 コンサートホール

愛知県 名古屋市東区

メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」
コダーイ ハンガリー民謡《孔雀は飛んだ》による変奏曲
ウェーバー 歌劇「オベロン」序曲

指揮:高井 優希

<ご案内>

■ウェーバー作曲:歌劇「オベロン」序曲
メンデルスゾーンが尊敬していたウェーバーによるこのオペラは妖精の王様オベロンを主人公とし、序曲が特に有名で、魔法の角笛を表したホルンのソロで始まります。妖精の世界、愛、嵐の様子などが巧みに描写されています。情景を思い浮かべながらお楽しみください。

■コダーイ作曲:ハンガリー民謡《孔雀は飛んだ》による変奏曲
第2次世界大戦が勃発した1939年に作曲されました。コダーイはハンガリーの作曲家で、オスマン帝国の支配下に置かれたマジャール人の自由への情熱を、16の変奏と終曲で表現しています。吹奏楽に編曲され演奏される機会が多い本作品、自由を求めて羽ばたこうとする孔雀のような、色彩感あふれるダイナミックな演奏をオリジナルの管弦楽版でお届けします。

■メンデルスゾーン作曲:交響曲 第3番 「スコットランド」
1829年、二十歳のメンデルスゾーンは、スコットランド女王メアリー・スチュアートゆかりのホリールード宮殿を訪れた際、その隣の寺院の廃墟を見て歴史に思いを馳せ、霧に包まれたような美しい冒頭の旋律を思いつきました(表の写真がその廃墟です)。筆が速いと言われるメンデルスゾーンが、着想から10年以上温め続けた超大作。スコットランドの雄大な風景が目に浮かぶ、幻想的な交響曲です。

指揮 高井 優希 たかい ゆうき

第4回黒海(コンスタンツァ)指揮コンクールにおいて第1位受賞。
これまでに、札幌交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、広島交響楽団、九州交響楽団、コンスタンツァ国立歌劇場管弦楽団、ローマ・イタリア管弦楽団など、国内外のオーケストラと共演。日本バチカン国交樹立75周年記念コンサート、田尾下哲演出オペラ「ラ・ボエーム」などの指揮のほか、NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」番組収録のための指揮指導にも携わった。
幼少よりピアノを学び、成蹊高等学校卒業後、東京藝術大学指揮科およびライプツィヒ・メンデルスゾーン音楽演劇大学指揮科卒業、東京二期会、藤原歌劇団、ニッセイオペラ、東京室内歌劇場、藤沢市民オペラなどの公演において副指揮者を務めた。
ウルリッヒ・ヴィントフール、田中良和の各氏に指揮を師事。また、ヨルマ・パヌラ、コリン・メッターズ、エルヴィン・アチェル、小林研一郎、佐藤功太郎、小田野宏之、松尾葉子の各氏の薫陶を受ける。
2019年度山田貞夫音楽賞特選。2020年度セントラル愛知交響楽団アソシエイトコンダクター。
武蔵野音楽大学講師。

名古屋シンフォニア管弦楽団
1982年に愛知県内のアマチュア音楽家有志によって結成され、2022年に創立40周年を迎えた老舗のアマチュアオーケストラです。音楽とアンサンブルをこよなく愛する、年齢も職業も様々なメンバーで構成され、年2回の定期演奏会を続けています。指揮者をはじめ経験豊富なプロの先生方による熱心な指導のもと毎週練習を重ね、お客様にも楽しんでいただけるような演奏会を目指して活動しています。

ウェーバー作曲:歌劇「オベロン」序曲

ウェーバーはドイツの作曲家で、ドイツオペラの創始者と言われています。当時はイタリアオペラが人気で、ドイツオペラは評価されない時代が長かったのですが、1821年にベルリンで初演された彼の代表作『魔弾の射手』が大成功を収めたことにより、ドイツオペラは音楽界から絶大な支持を受けることになりました。

そんなウェーバーの最後の作品となったのが、『オベロン』です。

このオペラのあらすじを簡単にまとめると次のようになります。

妖精王オベロンが王妃ティタニ アと「真実の愛」について夫婦喧嘩をして、二人は、「どのような困難にも負けずに愛し合う男女を見るまでは仲直りをしない」と決めてしまう。仲直りしたいオベロンは、騎士ヒュオンとバグダッドの女王レツィアに魔法をかけて二人を相思相愛の仲にする。二人は様々な困難を乗り越えて最後に結ばれ、オベロンとティタニ アも仲直りし、ハッピーエンドとなる。―

この物語のキーとなるのが、オベロンがヒュオンに渡す「魔法の角笛」。この「魔法の角笛」を表すのはホルンで、本日演奏する序曲もそのホルンのモチーフから始まります。妖精の国を暗示してみた木管楽器の軽やかな音型のあとには、ヴィオラとチェロによる幸せに満ちた旋律が流れます。その後、ヴァイオリンによる軽快で疾走感のある第1主題が登場し、一気に華やかな世界が広がります。続いてクラリネットの甘美な旋律(第2主題 第1句)が流れ、その後ヴァイオリンによって、レツィアが歌うアリア『大海よ、汝大いなる怪物よ』(第2主題 第2句)が奏されます。展開部を経て、再び第1主題が流れると、先ほどの軽快なメロディーは高揚感を増し、感動的なフィナーレを迎えます。

コダーイ作曲:ハンガリー民謡《孔雀は飛んだ》による変奏曲

孔雀はあまり飛べない。せいぜい数百メートルである。この曲の原曲となっているのはペンタトニック(五音音階)によるハンガリーの農民の歌で、歌詞には「くじゃくは飛んだ 牢獄の上に」とある。日本にはかもめが飛ぶ歌があるが、この孔雀は“飛んできた”あるいは“飛び乗った”というニュアンスである。孔雀はハンガリーでは希望の鳥とされており、オスマン帝国の支配下に置かれたマジャール人を牢獄に捕らえられた囚人に見立て、解放されることを願った歌となっている。コダーイは、ハンガリーの詩人アディ・エンドレがこの歌詞をもとに作った詩に、前述の民謡をモチーフにした旋律を付け、1937年に合唱曲にしている。今回演奏する管弦楽曲はその2年後の作品である。アディの詩にはハンガリーの変革への憂いが書き記されており、作曲当時ヨーロッパで吹き荒れていたファシズムへの懸念や対抗とも言われている。

1939年9月1日に第2次世界大戦が勃発し(当時ハンガリー王国であったハンガリーは枢軸国として参戦)、その約2ヵ月後の11月23日、ウィレム・メンゲルベルク指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によってこの曲の初演が行われた。皮肉なことに、メンゲルベルクは、戦争中ナチスに優遇され利用されたことにより戦犯扱いとなり楽壇を追われ、その後一度も復帰することなくこの世を去った。

この曲は主題と16の変奏曲及び終曲から成る。冒頭、ティンパニのロールと、チェロとコントラバスが奏でるペンタトニックの主題が交互に重く響き、木管、弦楽器のユニゾンへと受け継がれる。盛り上がりを見せ静けさが訪れた後、全休止を挟み突如テンポが上がり第1変奏曲が始まる。各変奏曲は変化に富み、ほとんど切れ目なく移り変わっていく。第13変奏曲は“Tempo di Marcia funebre(葬送曲のテンポで)”と唯一標題的な表記がある。終曲は軽快なテンポで始まるが一気に突っ走るわけではなく、途中で一旦落ち着きハープの伴奏の上に旋律、さらにそのオクターブ上をヴァイオリンソロが奏でる幻想的な雰囲気を醸し出す箇所もあり、多彩な構成となっている。その後、速いテンポで華やかに盛り上がり、最後は上昇音型を叩きつけるようにして曲を閉じる。


― 作曲者 コダーイ・ゾルターン について ―

ハンガリーの作曲家で、民族音楽学者、音楽教育者としても大きな功績を残している(ハンガリーでは日本と同じく姓・名の順で表記されるので姓がコダーイ、名がゾルターンである)。国内外を回って子どもや老人が口ずさむようなわらべ歌まで集めてハンガリー民謡に関する論文を執筆、音楽教育法においては理念や原理を提唱し、それらを基に確立された「コダーイ・メソッド」は、「オルフ」、「ダルクローズ(リトミック)」と合わせて三大音楽メソッドと呼ばれる。日本において一般での知名度はあまり高くないが、合唱曲は小学生から大人までコンクールなどで歌われており、管弦楽の代表作としてはオペラ「ハーリ・ヤーノシュ」などがある。吹奏楽でも、編曲された「ハーリ・ヤーノシュ」の組曲版や、今回演奏する変奏曲の吹奏楽版「孔雀は飛んだ」などが演奏されており、その功績は教育法と合わせて日本の音楽文化に幅広く浸透している。

メンデルスゾーン作曲:交響曲 第3番 『スコットランド』

正直言いまして、メンデルスゾーンは地味というか、あまりメインを張れる作曲家という印象はありませんでした。ところが実際に弾いてみると、情熱的で非常に美しい旋律とゆるぎないテンポ感、激しいリズム、そしてつきまとう哀愁にすっかり囚われてしまいました。美しくて切なくて激しい…メンデルスゾーンっていったいどんな人?

メンデルスゾーン(フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ)は、1809年ドイツハンブルクで裕福な銀行家の息子として生まれました。祖父はカントにも影響を残した有名なユダヤ人哲学者の教養豊かな両親に大切に育てられたメンデルスゾーンは、9歳でピアニストとしてデビュー、15歳で初の交響曲を作曲するなどモーツァルト並みに早熟な才能を開花させていきます。20歳の時、バッハのマタイ受難曲を約100年ぶりに上演し、古くさいと忘れ去られていたバッハの音楽を復活させました。その後ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就任すると、オーケストラに指示を出したり指揮棒を使ったりと近代指揮者のスタイルを取り入れたと伝えられています。その他、ライプツィヒ音楽院を設立したり劇団員の社会保障のため尽力するなど、作曲以外にも、ピアニスト、オルガニスト、指揮者、教育者、組織運営者として八面六臂の活躍で多忙を極めたメンデルスゾーンは、後世に多大な影響を残して38歳の若さで亡くなってしまいます。

そんなメンデルスゾーンが、20歳の時初めて訪れたスコットランドで、女王メアリ・スチュアートの居城だったホリードール宮殿やその隣の朽ち果てた礼拝堂から着想を得て作曲したのがこの『スコットランド』です。

プロテストに改宗し(バルトルディはクリスチャン名)、バッハの偉大さに早くから気づき、オラトリオを2曲も作曲するほど敬虔なクリスチャンでありながら、出身がユダヤ人であることを強く意識し誇りを持っていたと言われるメンデルスゾーン。謂れなき迫害を受けることもあったようですが、その宗教観が彼の音楽にも影響しているのかもしれません。

天才で有能でいつも忙しくて若干気難しいところもあったユダヤ人が、スコットランドの荒涼とした自然と悲劇的な歴史にインスパイアされて作曲したと思えば、この仄暗さと厳しさもしごく納得できるような気もするのです。

全4楽章からなりますが、各楽章切れ目なく連続して演奏されるよう指示されています。


第1楽章 イ短調 Andante con moto-Allegro un poco agitato

冒頭で奏される物悲しさ漂う旋律は、悲劇の宮殿と朽ち果てた廃墟を彷彿とさせ、続くヴァイオリンのうねりは断崖絶壁に打ち寄せる荒波のようです。アレグロに入ってからもザワザワした雰囲気が続き、次第に厳しさを増していきます。コーダではスコットランドの嵐が吹き荒れ、冒頭の主題が再現されて静かに終わります。

第2楽章 ヘ長調 Vivace non troppo

スケルツォ楽章。クラリネットがスコットランドの民謡を思わせる旋律を軽やかに奏でます。その裏でずっと忙しい弦楽器にも注目。

第3楽章 イ長調 Adagio

壮大な緩徐楽章。歌のような甘美なカンタービレと葬送行進曲を思わせる厳しい付点のリズムとが、管弦打によって交互に入り乱れながら進み、名残を惜しむように静かに終わります。

第4楽章 イ短調ーイ長調 Allegro vivacissimo-Allegro maestoso assai

短い導入の後、ヴァイオリンによって鋭いリズムの主題が奏され、その後弦の刻みの上で奏でられる木管の第2主題は1楽章冒頭の廃墟のイメージの再現。この主題が形を変えながら繰り返されて静かに終わるかと思いきや、突如6/8拍子の長調の堂々とした後奏が始まります。全曲を覆っていた哀愁が、ここにきて急に力強く自信に満ち溢れて歓喜すら覚えて感動的に終わります。

この終楽章の後奏は弾いていてとても幸せな気分に包まれるのですが、急な明るさに違和感を抱いた指揮者のクレンペラーは短調のまま終わらせる録音も残しています。アレンジの賛否はともかく、これはこれで切なさが滲み出ていて私は好きです。

チラシ表
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