名古屋シンフォニア管弦楽団
Nagoya Sinfonia Orchestra
オープニングを飾るのは、イタリアの作曲家ヴェルディによる歌劇「ナブッコ」の序曲。ナブッコは古代のバビロニア王ですが、劇中の合唱曲「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」は今もイタリアで国家のように愛唱されています。さて、その理由は? 祖国への想いを込めたその美しい旋律が序曲でも登場します。
続いて、モーツァルトの交響曲の中から31番「パリ」を演奏します。1778年、パリ滞在時に作曲依頼を受けたモーツァルトが、パリ市民の期待に応えるべく当時のフランス趣味を盛り込みつつ、交響曲としてクラリネットを初めて使うなど新境地を開きながら作曲したシンフォニーです。始終明るい曲調が続きますが、パリに同行していた母を同時期に亡くしたモーツァルトの悲しみを思うと感慨深いものがあります。
その約100年後に作られたのがブルックナーの交響曲 第4番。ブルックナーはモーツァルトと同じオーストリアの作曲家ですが田舎の生まれで、この曲からはとくに「自然からの声」が感じられます。「ロマンティック」という標題から甘いロマンスを想像された方、残念ながら違います…その意味は作曲者のみぞ知るところですが、中世や自然へのノスタルジーのようなものかもしれません。冒頭、モヤの中から浮かび上がるホルンの響きで1日が始まります。繊細さと大胆さを併せ持ち、絶えず移ろうハーモニーが美しいブルックナーの広大な世界をのぞいてみてください。
指揮 高橋 隆元 Ryugen TAKAHASHI
15歳頃から独学でピアノ・音楽理論・作曲法などを学ぶ。
その後、国立音楽大学 別科 調律専修に入学し、在学中から指揮活動を含めた音楽活動を開始。卒業後も調律の仕事に従事しながら演奏活動を続け、31歳頃に本格的な指揮者修行を踏み切る。
指揮をクルト・レーデル、高階正光、湯浅勇治(生年順)の各氏に師事。
1999年、日独楽友協会主催の指揮者講習会において優秀賞を受賞。特待生としてウィーンの指揮マスターコースに招待され、ディプロムを取得。
また、2000年3月、ドイツ連邦共和国大使館後援「ベートーヴェン交響曲連続演奏会」において交響曲第2番・第4番・ピアノ協奏曲第4番を指揮し好評を博す。
同年8月には、ハンガリーのブダペストで開催されたクルト・レーデル国際指揮者コンクールで第3位を受賞し、受賞者記念コンサートでプロコフィエフの「古典交響曲」を指揮。9月にはブダフォークホールでの演奏会に客演、エルノ・ドホナーニ交響楽団を指揮して好評を得た。
2002年、クルト・レーデル氏からの要望により、氏の著書である「指揮のテクニック」(音楽之友社)のフォトモデルを務めた。
その他の活動としては、1998年より9年間武蔵野室内アンサンブルの常任指揮者を務めたほか、多くの団体で指揮、またオペラの分野では東京シティオペラ協会において、モーツァルト「魔笛」・ヴェルディ「リゴレット」・プッチーニ「ラ・ボエーム」等のアシスタントを務めた。
さらに、2009年より5年間聖光学院管弦楽団音楽監督、2010年より6年間三鷹管弦楽団音楽監督を歴任、2016年より霞ヶ関フィルハーモニー管弦楽団第20回記念演奏会までの3年間常任指揮者を務めるなど、幅広く様々な楽団の発展に寄与している。
名古屋シンフォニア管弦楽団 Nagoya Sinfonia Orchestra
1982年に愛知県内のアマチュア音楽家有志によって結成され、40年以上にわたり活動を続けている老舗のアマチュアオーケストラであり、創設時のメンバーから現役学生まで、幅広い年代にわたる音楽好きの団員で構成されています。年2回の定期演奏会を続けており、指揮者をはじめ経験豊富なプロのトレーナーによる指導のもと、自分たちが音楽を楽しむだけでなく、お客様にも楽しんでいただけるような演奏を目指し、全員が協力して活動しています。
ヴェルディ:歌劇『ナブッコ』序曲
オーケストラの演奏会では、オープニングで歌劇(=オペラ)の序曲が演奏されることがよくあります。その理由は、「華やか」「長さが手頃(数分のものが多い)」「おいしいメロディが詰まっていて楽しい」「管楽器の推し?」など様々あるでしょう。ということで、今回はドラマティックな歌劇『ナブッコ』の序曲をオープニングに選びました。
バビロニア国王ナブッコを題材としたこのオペラは、歴史ドラマでありながら、政治や宗教、家族愛、お約束の色彩の要素をふんだんに盛り込み、支配欲と嫉妬のドロドロの果てに悪い女は服毒、ナブッコは「王の中の王」になるという(やや強引な)お話。その劇中で最も心を打たれるのは、ヘブライ人たちがユーフラテス河畔で祖国への思いを込めて歌う、「行け、我が思いよ、黄金の翼に乗って」と題する合唱の場面です。
イタリア生まれのヴェルディは、作曲当時、北イタリアのロンバルディア地方を支配していたオーストリアからの独立運動に深く関与しており、国を失いたくないという強い気持ちを込めてこの歌の作曲をしたと思われます。その静かな合唱に聴衆は涙を流して熱狂し、イタリアの国家の候補に上がったこともあったそうです。本日お聴きいただく序曲でも、一旦静かになった後、その穏やかな旋律をオーボエとクラリネットが奏で始め、後にトランペットも朗々と歌いますので、お聴き逃しなく。
ヴェルディは、度重なる不幸や自信喪失で失意のどん底にあった時に、この歌詞を含む脚本に出会い、生きるための新たなエネルギーを得ます。28歳で完成させ1842年に初演されたこのオペラは彼の正真正銘の出世作となりました。その後も生涯にわたり素晴らしいオペラ音楽を生み出し続けたヴェルディ。彼が作り出したその世界の一端をどうぞお楽しみください。
モーツァルト 交響曲:第31番 ニ長調 『パリ』
モーツァルトの音楽を聴く機会はとても多く、バス、本屋、病院などで誰もが耳にしたことがあるだろう。モーツァルトが生きた時代から200年以上経ち、社会の変化とともに音楽も変化しているが、それでも、今なお世界中でモーツァルトの曲が親しまれているのは、人々の感覚に素直に響く魅力があるからではないだろうか。
クラシック音楽界のなかでも特に知名度が高いモーツァルトだが、どのような作曲家で、どのような状況のなか交響曲『パリ』を作曲したのだろうか。少し知っていると、日常よく耳にするモーツァルトの音楽も、本日の演奏も、もっと面白くなるかもしれない。モーツァルトの概略と、本日の演奏曲について、これから少し見ていきたい。
< ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト >
ハイドン、ベートーヴェンと並ぶ3大ウィーン古典派の1人。1756年にザルツブルクに生まれ、1791年に35歳の若さでウィーンにて死去。父レオポルトはザルツブルクの宮廷音楽家であり、この父から英才教育を受けて育った。幼少期から天才ぶりを発揮し、5歳のときにはすでに作曲をしていた。短い人生ではあったが、作曲した作品数は600曲以上。
< モーツァルトの生きた時代 >
18世紀ヨーロッパは、絶対主義から近代民主主義へと転換する激動社会。啓蒙主義が広まり、宗教的な思想ではなく合理的な思想にしたがうようになり、個人の自由が尊重されるようになった。文化・芸術面では、わかりやすく人間的で、調和と優雅さが求められた。こうした時代背景ともない、音楽の様式もバロックから古典へと転換していき、快い音と合理的な構成が好まれた[1]。
< 交響曲『パリ』 >
モーツァルトは1778年3月に母とともにパリに到着。パリのコンセール・スピリチュエル(聖楽演奏会)の音楽監督ジャン・ル・グロから聖体祭用の交響曲の作曲依頼を受け、この曲を作曲した。クラリネットを初めて採用した完全な2管編成であり、管楽器の協奏的効果が随所で用いられている。明快な曲想と鮮やかな管弦楽法など、当時のフランス趣味が大幅に取り入れられ、推敲を重ねたうえで完成された。1778年6月の初演時に、パリの観客から大拍手があったとされる[2,3]。
第1楽章 アレグロ・アッサイ ニ長調
快活でエネルギーがあふれ、聴く人をワクワクさせてくれる。全楽器のユニゾンで力強く始まったかと思うと、すぐさまヴァイオリンが小声で旋律を奏する。この第一主題が何度も現れる。展開部はイ長調で第一主題がさらに輝かしく奏されるが、二短調に転じて雲行きが怪しくなる。そこへ、ヴァイオリンがヘ長調で楽し気にカノンを歌い出す。曲の途中で大拍手があったのはこの部分かもしれない[3]。
第2楽章 アンダンテ ト長調
情緒豊かな旋律がうたわれる。ト長調で第1主題がうたわれた後、ニ長調に転じ優美な第2主題となる。やがて、ため息をつくような音型とともに二短調となり、最後に再び第1主題がうたわれる[3]。洗練された旋律のなかに、時折、無邪気な表情もうかがえる。
第3楽章 アレグロ ニ長調
最後の終楽章は、爽快に駆け抜けていく。第2ヴァイオリンがp(ピアノ)で静かに第1主題を始めたかと思うと、すぐさまf(フォルテ)になだれ込む。この開始はパリの聴衆にとって奇想天外だったらしく、大いにうけたという。推移部を経て、突然pになり、イ長調の第2主題がフーガ風に展開される。明快なダイナミクス変化のうちに、鮮やかに完結する[3]。
エネルギーに満ちあふれたポジティブな印象の曲。しかし、作曲されていた当時、モーツァルトの母はパリに到着後まもなく体調を崩し、この曲の初演の翌月に死去した[2]。母はこの曲を聴くことができたか不明だが、もし聴いていたとしたら、きっと楽しんでくれたのではないだろうか。
参考文献
[1] 橋本英二/バロックから初期古典派までの音楽の奏法 音楽之友社
[2] 西川尚置/作曲家 人と作品シリーズ「モーツァルト」 音楽之友社
[3] 音楽之友社編/作曲家別名曲解説ライブラリー「モーツァルトI」 音楽之友社
ブルックナー:交響曲 第4番 『ロマンティック』
ブルックナーという作曲家、皆様はご存じでしょうか。音楽室の肖像画にもいたようないなかったような…。ぱっと顔が思い浮かばない人も多いのではないでしょうか。
私たちアマチュア演奏家にとって好みの分かれる作曲家かもしれません。名古屋シンフォニアの過去85回の演奏会でも取り上げられたのはわずか3回、最後に取り上げたのは2003年で実に22年ぶりとなります。
そんなブルックナーとはどんな人物だったのか、簡単にご紹介しましょう。
生まれはオーストリア、リンツに近い村で、幼い頃から教会で聖歌隊やオルガンに親しみ育ちました。学校の先生のかたわら教会のオルガニストとしても活躍、30歳をすぎる頃から作曲家として本格的に活動して有名になってくる、という作曲家としてはかなり遅咲きの部類に入ります。
完璧主義者だった(と思われる)ブルックナーは、とにかく曲の校訂が多い作曲家としても有名です。本人が直接校訂していることもあれば、後の研究者が校訂していることもあり、もはやどれが正しいのか考えることすら面倒くさくなってしまいます。
ブルックナーの曲は精密で巨大な建築物のようだと表現されることがあります。例えるならば、140年以上かかって来年2026年にようやく完成すると話題になったサグラダ・ファミリアみたいな感じでしょうか。それだけ精密に設計された曲であれば、ちょっと直したら他も気になってしまって…というのもちょっとだけわかる気がします。
ブルックナーの曲は複雑難解なイメージがありますが、実は彼の曲にはいくつかの大きな特徴がありますので、その中の代表的な4つをご紹介しておきます。この4つでだいたい分かります…多分。
[トレモロ] 弦楽器の奏法の一つ。演奏する場面に合わせて、時には霧のように、またキラキラとした水面の煌めきのように、そしてある時は激しい瀑布のように、と色々な音色を紡ぎ出すことができる魔法のようなテクニック。ブルックナーの曲はトレモロから始まることが比較的多い(ブルックナー開始という)。
[ブルックナーリズム] 「2+3」もしくは「3+2」のリズムでこの音形を多用するのもブルックナーの大きな特徴。
[ゼクエンツ] いわゆる「繰り返し」のことで、同じフレーズをいろんな楽器で何度も何度も何度も何度も果てしなく繰り返す。
[ブルックナー休止] 曲の場面転換に用いられ、音楽の流れを断ち切り一瞬の静寂を伴う。この瞬間ホールに残った残響が空中に消えていく余韻を楽しむことこそがブルックナーの醍醐味の一つ。
ほかにもいくつかあるのですが、上記のような他の作曲家にはあまり見られない独特な「癖」の絶妙な組み合わせでブルックナーは構成されています。
それでは、今回演奏する交響曲第4番の楽章ごとの解説を少しさせて戴きましょう。
第1楽章
霧のようなトレモロから美しいホルンの旋律で曲が始まります。ブルックナーは「一日の始まりを告げる角笛」「夜」といったメモ書きを残しており、夜明け前ではないかと推測されます。このホルンの美しいメロディ、非常に重要で1楽章の中だけでも70回以上いろんな楽器で演奏されます。このメロディを提示した後、すぐブルックナーリズムが始まります。なんと連続30回のゼクエンツです。こちらも1楽章を通して130回以上出てくるんですね、どれだけ好きなんでしょう。
再現部を経てブルックナー休止の後、冒頭と同じホルンの角笛が響きわたりますが、ここで何故か突然ヴィオラが割って入ってきます。実に30小節もの長い間ヴィオラが木管楽器と力を合わせて金管群を導くかのように朗々と唱います。普段はハモリや伴奏が多いヴィオラ。嬉々として弾く者と必死の形相で弾く者と。そんな心境を観察するのもまた面白いかもしれません。ちなみにこのヴィオラのリードの仕方は教会音楽に由来しているんだとか。教会音楽にも精通したブルックナーならではかもしれません。
第2楽章
ブルックナーの自筆譜や手紙のやり取りには「歌」「巡礼の行列」といった言葉がみられるそうで、この楽章はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」の2楽章の葬送行進曲を意識していると言われています。重い足取りを思わせる前奏からチェロの哀愁漂うメロディが響き渡ります。このチェロのメロディ、出だしは1楽章のホルンのメロディの変形だったりします。そういった細かな伏線もブルックナーの奥深いところ。ブルックナー休止を挟んで弦楽器のピッツィカートに誘われて歌うヴィオラのメロディ(なんと2回もあります)は、雨の中故人へ想いを馳せているかのようにも聞こえます。こんなにメロディを弾けるなんて夢のようとヴィオラ弾きなら誰もが思うに違いありません。
第3楽章
狩りの音楽をイメージしているとされています。始まりのトレモロはここでは馬の疾走感なのか、「動」を感じる音楽で先ほどの2楽章とは対照的です。途中に挟まるトリオは食事のための休憩なのだとか。和音から察するに、ハーディ・ガーディのような手回しオルガンを奏でながら、雑談したり踊ったりしてくつろいでいるのかもしれません。
第4楽章
ブルックナーの記述によると「楽しく過ごした1日の終わりに突然降り始めた夕立」とのこと。この楽章は低弦の迫りくるビートから始まりホルンとクラリネットが息の長いフレーズを奏でます。このフレーズがこの楽章を支配するメロディになるのですが、最初はゆっくりとしたメロディがどんどん圧縮されて次第に短く凝縮され緊張感が高まっていきます。緊張が頂点に達したとき、全楽器のユニゾン(同じ音を出すこと)で主題へと繋がります。今度はこの主題をばらして各楽器が掛け合いながら複雑に絡み合い、時には凝縮され、引き伸ばされながら進行していきます。
結末はどこに向かっていくのか、ブルックナーは最後に私たちに何を語りかけているのでしょうか。是非、ご自身で感じ取ってみてください。
ブルックナーの余韻に浸りながら帰路についていただければ幸いです。
ある日の会話から ~名古屋シンフォニア新入団員編~
その1 『ヴァイオリンにはファーストとセカンドがあります』
<登場人物>
N=入団1年目のヴァイオリン新人。オケ(オーケストラ)に入る事自体が初めて。
O=オケ歴数十年の大先輩。同じくヴァイオリン担当でヴァイオリン歴も大変長い。
~ ある日の会話 ~
N:Oさん聞きました? 私たち今期はセカンドからファーストに移動だそうですよ!
O:そうみたいだね。
N:Oさんがファーストというのはわかるけど、オケ初心者の私がファーストで大丈夫でしょうか?
O:ヴァイオリンの2つのパート、1st(ファーストヴァイオリン)と2nd(セカンドヴァイオリン)の主な違いは音域なんだ。高音域を主に担当するのが1st、それより少し低い音域を担当するのが2ndだね。
Nさんはオケ初心者といっても、入団前に何年か教室で習っていたそうだから「ハイポジション(高音域)」も習ったでしょ?
N:そうですね…一応って感じですけど。
1stのリーダーはそのままオケの演奏のリーダーとなるコンマス(コンサートマスター)ですし、1stはとりわけ上手な方ばかりが集まるものと思っていました。
O:そういう印象があるのはわかるよ。
ハーモニーの中で、高い音はメロディを演奏することも多いから1stは目立つ。それに、高音を正確に演奏するのはなかなか難しいしね。
2ndはどちらかと言えば地味かもしれない。でも、高音と低音の間にある音がハーモニーを決めることになるわけだから、まずこれはすごく大切な役割だよ。それに1stと一緒にメロディを弾くこともあれば、ハモリを弾くこともある。あるいは正確にテンポを刻みながら伴奏したりと、こちらはこちらで求められる要素も多い。
N:そういえば「1stは2ndが出す音の上に乗って」と言われたりして、実は2ndが主導権を握っている場面もけっこうありますね。
O:うん。「2nd職人」って言葉聞いたことない?
N:あります、あります!
O:2ndならではの面白さを楽しんでいる人も少なくないよ。Nさんはまだオケ歴始まったばかりだから、とりあえず両方経験してみてってことじゃない?
N:なるほど、つまりどっちも難しいんですね。練習、練習!
<中堅団員のツッコミ> ヴァイオリンのパート決めにあたってはアンケートを実施しています。1stも2ndも経験し、それでも飽き足らず異世界のヴィオラに流出して定住した人も少なくありません。
<今回の弦楽器配置> 1stヴァイオリンは不動の位置(客席から見て左手の手前)。今回はその対面(右手手前)にヴィオラ族が陣取り、目立ってやろうと目論んでいます。1stの右隣に座る2nd族、その右隣のチェロ族、そして右奥に並ぶコントラバス族も負けてはいられません。
その2 『オーボエのAで始まる』
<新たな登場人物> C、F=Nの友人。オケの団員ではない。
~ 前回の公演後の会話 ~
C、F、N:カンパーイ!
N:聴きにきてくれて、ありがとう!
F:Nちゃん、おつかれさま。すごく真剣な顔して弾いていたね。よく見えたよ。
C:「個人練習が間に合わなくて泣きそう」とか言っていたけど、間に合ったんだね。
N:とにかく、やるだけはやったよ!
C:間に合うといえば、オケが演奏を始める前に「チューニング」するでしょ。あれって間に合うの?
F:チューニング?あ、最初に一人だけ立って音を出すやつのかな?あれは何をしているの?
N:演奏を始める前に、全ての楽器の音程が揃うよう、基準の音の高さを合わせておくんだよ。
まずオーボエの人にA(「アー」と読む、「ラ」の音のこと)を出してもらって、立っている人(コンマス)が自分の楽器のA線(「ラ」の音の弦)をそれにピタリと合わせる。
次はコンマスがその合わせた「ラ」の音をみんなに聴かせて、全員が自分の楽器をその音に合うように調整するの。
C:うんうん。あれって、そんなにサッと合わせられるものなの?
ギター弾く時も調弦はするけど、なかなかピッタリ合わないこともあるし、弦楽器の人たちなんか楽器を構えたままチャチャっと合わせるよね。難しくない?
N:弦楽器の調弦は特に難しいよ。練習のたびにやって慣れていくんだけど。
勢い余って弦を切ってしまうなんて怖〜い失敗もあるし。
F:うわぁ、それは緊張するねぇ!
N:そうなの。つい慎重になって時間がかかっちゃう。だから本番では弦楽器は先に舞台裏で合わせておいて、舞台上では確認するだけにしておく。でも、舞台の照明や空調などによって室温や湿度変わったら楽器は影響受けるから、舞台上でやり直すこともあるよ。
C:あのチューニングの音を聞くと、演奏が始まる!って感じがするね。
F:ところで、どうしてチューニングはオーボエの音で始まるの?
N:理由はいくつかあるみたいなんだけど、ひとつには、管楽器でも弦楽器でも、多くは音の高さを微調整できる機能があるんだけれど、オーボエの構造では、舞台上で微調整するのた難しいからなんだって。
F:それでオーボエが基準になるんだね。次回は演奏前のチューニングにも注目してみよう。
(好評ならば)つづく(予定)

